診療日誌DIARY

DIARY診療日誌

診療日誌(16) 平成29年5月・6月 




5月26日、京都のカイロの先生から電話があり、6歳の御子息のKT君が跳び箱から落ちて右腕を骨折したと言って相談を受けた。手術をしたくないと言うので来れますかと言ったところ、翌日27日に来院して頂けた。右腕の尺骨の中央部の骨折であった。早々整復して副木固定。
5月30日に2回目の来院。レントゲンで確認の上、再整復し固定方法も回内位固定に変更した。副木は骨折部が動く間は副木の圧迫力で固定だけでなく整復もされる。骨折部が動かなくなってくるとその作用は固定だけとなる。
私は6月3日にセミナーの講師として大阪へ行っていたので、会場で3回目の施術をした。骨折部分もほとんど動かなくなってきて経過良好である。関節を動かして再度固定。
6月11日に金沢で私塾の講義をしていたので、もう一度来ていただいた。骨の癒合も順調なので、後は親御さんに後療をお願いして、私の施術は終了となった。その後メールで報告があったが、経過良好とのこと。私はもう固定しなくても良いですよとお話ししましたが、活発な子なので、もうしばらく固定しますとのことであった。

6月6日、YN君は左手首の痛みを訴えて来院。調べてみると若木骨折である。子供では、骨の表面を覆っている骨膜が損傷しない場合があって、骨折していても骨折部があまり動かず、また骨折部からの出血も骨膜が損傷していないため、ほとんど腫れもない。YN君は怪我をしたのは4日であったが、打撲・捻挫と思って2日後の来院であった。手首の際までの固定で手関節を動かしながら、6月30日で治癒となった。


「骨折の治癒のメカニズム」
 骨折すると骨折端より出血して血腫ができる。やがて1週間ほどすると血腫の中に結合組織が出来てきて糸が絡みついたようになって骨折部が次第に動かなくなってくる。その結合組織に沿って骨折端より骨芽細胞が入り込んで2~3週間くらいで仮骨となり、カルシウムやリンなど骨の成分が沈着して1ヶ月半くらいすると本当の骨になってくる。骨が癒合した後は多少過剰な骨が出来て太くなるが、骨も絶えず新陳代謝しているので、年月と共に破骨細胞が働いて過剰な部分が削ぎ落とされて、何年かすると元通りの綺麗な骨になるのです。
 骨折は、手術しない方がはるかに早く治る。と言うのは、手術すると今お話しした大事な血腫が破壊されることがあり骨が出来にくくなる。また金属の板(プレート)を当てて余りにもしっかりと固定してしまうと骨折端に刺激が加わらなくなって骨癒合がしにくくなる。骨折は血が骨になり、刺激が骨癒合を促進するのです。
 当院では、昔ながらの添え木(副木)で固定する。副木は骨が動く間はその圧迫力で整復力が働く。また包帯をほどいたときに整復を繰り返す。骨折部が動く1週間が特に重要である。その間に出来るだけ正しく整復するのである。その際、糸がプチプチと切れてしまうくらい動かしてはいけないが、それを注意して動かしながら治すと機能的な整復が出来て機能障害が残らない。また施術の度ごとに関節の拘縮が起こらないように動かしているので、リハビリが必要なく、骨が癒合すると施術も終了となるので早く治る。